用語解説 せかいモデル

世界モデルとは

世界モデルとは、AIが外界の状態と変化の仕方を内部に持ち「次に何が起きるか」を予測する仕組み。ロボットなどフィジカルAIの土台として期待されるが、主要プレイヤーは用途も時期も公開しておらず、料金は比較できる段階にない。

世界モデル(World Model)とは、AIが外界の状態とその変わり方を内部に持ち、「いまこの行動を取ったら次に何が起きるか」を予測できるようにした仕組みです。次の単語を当てるのが大規模言語モデルだとすれば、世界モデルが当てるのは映像・空間・物体の次の状態であり、身体を持つAI(ロボットや自動運転などのフィジカルAI)の土台として位置づけられています。

エンジニアの関心事である「何ができるのか」は、要するに事前の予行演習です。次の状態を予測できるモデルがあれば、実機を動かす前に内部で行動候補を試して良さそうな一手を選べますし、実機で集めにくいデータを内部の予測で補える可能性もあります。テキストで世界を説明するのではなく、接触・力・位置といった物理的な量を扱う点が、既存のチャット型AIとの決定的な違いです。

「使い方」を知りたい読者には、率直に書いておきます。現時点で本記事が確認できた範囲では、世界モデルは研究・構築の段階にあり、誰でも呼び出せる形で提供されているものではありません。世界モデルの主要プレイヤーであるYann LeCun氏のAMI Labsと、Fei-Fei Li氏のWorld Labsは、開発内容も商用化の時期もほとんど明かしていません。AMI Labsの共同創業者でVP of World Modelsを務めるMichael Rabbat氏は「話す準備ができたときに話す」と述べています。つまり、業務システムに組み込む段取りを今すぐ引ける状態ではありません。

料金についても同じです。用途も時期も公開されていない以上、月額いくら・1回いくらという比較表は作れません。ここで価格らしきものを提示している記事があれば、出所を確認したほうがよいでしょう。企画・DX側の現実的な動き方は、値段を待つのではなく、自社の工程のうち「予測がないせいで人手に頼っている部分」を棚卸ししておくことです。提供が始まったときに何を置き換えるかが決まっていれば、検討の速度がそのまま差になります。

誰が作っているのかという投資家の問いには、二つの層があります。ひとつはAMI LabsとWorld Labsのような、基盤そのものを狙う研究主導のプレイヤー。もうひとつは、実機と組んで具体的な工程に落としにいく層です。日本ではロボットベンチャーのHighlandersが、経済産業省とNEDOによる「GENIAC」のロボット基盤モデル研究開発事業に採択されました。物体との接触状態を推定しながら動作を生成する国産のフィジカルAI基盤モデルを開発し、自社のヒューマノイド「N」に載せて、自動車製造の位置合わせ工程での性能を検証します。「N」は三菱自動車工業と量産化を進めています。

読み分けの目安として筆者の見方を書けば、注目すべきは映像デモの美しさではなく、実機の特定工程でどれだけ成功したかという数字と、それがいつ出てくるかです。前者を出せる陣営と、まだ何も語らない陣営の差が、今後の評価の分かれ目になります。

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