フィジカルAIとは
フィジカルAIとは、ロボットや設備といった物理的な体を通して、現実世界で動作を生成するAIのことだ。テキストを出力する生成AIに対し、フィジカルAIが出力するのは関節の角度やモーターの動きであり、カメラやセンサーが捉えた現場の状態がそのまま入力になる。
中心にあるのは「現場で動かす → データが貯まる → モデルを学習する → またロボットに戻す」というループだ。ugoが2026年9月16日に発表した「ugo Physical AI Fabric」は、このループをそのまま製品構成にしたもので、セミヒューマノイド「ugo Nova」、データ収集キット、「ugo Data Factory」、「ugo Model Lab」の4点からなる。
何に使えるのか(使い方)
実例が集まっているのは、工場・プラント・製造ラインといった「現場」だ。
ダイセルはAVITAと、四足歩行ロボットによる化学プラントの巡回・設備点検の共同実証を、2026年12月から大竹工場(広島県)で始める。8月から走行テストを実施済みで、12月からは自律走行で、活用可能性・安全運用の条件・点検精度・運用方法を検証する。初期に使うのは「Unitree Go2」。
Highlandersは経産省・NEDOの「GENIAC」ロボット基盤モデル研究開発事業に採択された。物体との接触状態を推定しながら動作を生成する国産のフィジカルAI基盤モデルを開発し、自社ヒューマノイド「N」に載せて、自動車製造の位置合わせ工程で性能を検証する。「N」は三菱自動車工業と量産化を進めている。
ロボットの形をとらない使い方もある。エクサウィザーズと住友電装は2026年8月から、ラインの異常の兆しを検知する「監査AI」、現場リーダーに対応を促す「介入AI」、熟練者との対話で暗黙知を蓄積する「レビューAI」を共同開発中だ。今年度中に海外拠点で実証し、来年度のグローバル展開を目指す。
どこで計算するのか
GPUをロボットの近くに置く必要があるか、という論点がある。KDDI、モルゲンロット、トークネットの3社は2026年9月、リテールロボットを使った分散型データセンターの実証を開始した。大阪・堺データセンターと多摩ネットワークセンターをオールフォトニクス・ネットワーク(APN)で結び、GPU仮想化基盤と組み合わせて、離れた拠点のGPUで分散学習と遠隔推論ができるかを確かめる。焦点はGPUの設置場所を最大500km以上離せるかどうかで、結論はまだ出ていない。
料金はいくらか
結論から言うと、ここで挙げた製品・サービスに公表価格は見当たらない。ugoのPhysical AI Fabric、Highlandersの「N」、エクサウィザーズの工場向けエージェント群は、いずれも発表時点で価格が公開されていない。ロボット本体・データ基盤・モデル学習・運用がセットになる構成のため個別見積もりが前提になる、というのが筆者の推測だが、各社が明言した事実ではない。現時点で型番が判明しているのはダイセルの実証で使う「Unitree Go2」のみで、調達価格は公表されていない。検討するなら、価格表ではなく実証の枠組みから入ることになる。
誰が作っているのか、競合は
プレイヤーは層に分かれる。ロボット本体と学習基盤を垂直に持つugoやHighlanders、現場のAIエージェント側から入るエクサウィザーズ、計算基盤を担うKDDIら通信事業者、そして資金と事業創出の側だ。
資金面では、大企業向けにスタートアップを作るVantora(旧UP.Labs)がSilversmith Capital Partnersから1億ドルを調達し、フィジカルAIに集中する方針を示した。今後は外部市場向けではなく大企業パートナー専用のスタートアップづくりに絞り、パートナーが事業を自社に取り込める独自のM&Aパイプラインへ移行する。同じ「フィジカルAI」でも、ハード・モデル・インフラ・事業組成のどの層を取りにいくかで戦い方が違う点は、比較のときに押さえておきたい。









