用語解説 エージェントフォース

Agentforceとは

AgentforceはSalesforceのAIエージェント構築・運用基盤。CRMデータに接続した自律エージェントを作る仕組み、Action設計などの実装の勘所、課金の考え方、Microsoft・ServiceNowとの競合関係までを整理する。

Agentforceは、Salesforceが提供するAIエージェントの構築・運用プラットフォームである。CRM上の顧客データや業務プロセスに接続したエージェントを作り、Webサイトの問い合わせ窓口、Slack、社内業務アプリ、営業支援などに配置して、人を介さずに処理そのものを完了させることを狙っている。

位置づけとしては、従来のチャットボットや「聞かれたら答えるアシスタント」の次に来るものだ。Salesforceは以前Einstein Copilotという名前で対話アシスタントを出していたが、Agentforceはそこから一歩進んで、与えられた権限の範囲内でエージェント自身が手順を決め、レコードの更新や返金処理、ケースのクローズといった副作用のある操作まで実行することを前提にしている。ここが評価の分かれ目で、「賢く喋るか」ではなく「任せて安全か」が製品の勝負どころになる。

作り方は宣言的だ。Agent Builder上で、エージェントに扱わせる業務の単位(Topic)、その中でのふるまいを自然言語で書いた指示(Instructions)、実際に呼び出せる操作(Action)を定義する。ユーザーの発話をどのTopicに割り当て、どのActionをどの順で呼ぶかを決めるのが推論側のエンジン(Atlas Reasoning Engine)で、回答の根拠となるデータはData Cloudに統合した社内データからグラウンディングする。入出力のマスキングや監査ログ、モデル側にデータを残さない設定はEinstein Trust Layerが担う。

エンジニアが実際に触る部分は、ほぼActionの設計に集約される。ActionにはFlow、Apex、プロンプトテンプレート、MuleSoft経由の外部API呼び出しなどを割り当てられ、エージェント本体はそれらを呼ぶ側に徹する。つまり既存のSalesforce資産がそのまま道具箱になる一方、Actionの説明文の書き方、引数の型、権限(エージェントが実行ユーザーとして何をできるか)の設計を誤ると、素直に事故る。ヘッドレスで自社アプリから叩くAgent APIも用意されており、UIはSalesforceに寄せずに使うこともできる。難所は構築より評価で、想定会話を流して回帰を見る仕組みを最初から組んでおかないと、指示を一行変えた影響が読めなくなる。

料金は、発表当初は会話1件あたりの従量課金(1会話2ドル)として打ち出され、その後アクション単位で消費するクレジット型(Flex Credits)が追加された、という流れだ。ただし体系は改定が続いているので、金額は必ず最新の見積もりで確認してほしい。導入検討で見落とされがちなのは、エージェント本体の課金よりもData Cloudのデータ取り込み・保存コストのほうが効いてくるケースがある点である。

投資家向けの構図は比較的わかりやすい。作っているのはSalesforce本体で、同社はこれをCRMの次の収益源として位置づけ、自社のサポートサイトでも運用している。競合はMicrosoft(Copilot Studio、Dynamics 365)、ServiceNow、Google、そしてOpenAIやAnthropicのAPIを使った内製である。Salesforce側の主張する差別化は、モデルの賢さではなくデータと権限の側、すなわちCRMのメタデータと既存の業務ロジックに最初から繋がっていることだ。その延長で同社はDreamforceで自社初のCRM向け推論モデル「Koa」を発表している。NVIDIAのオープンモデルNemotron 3 Superを、約30年分のCRM導入から作った合成データでポストトレーニングしたもので、オープンモデルゆえ重みを自社で保持し、学習も推論も自社インフラ内で完結する(顧客データは使っていないとしている)。外部モデルへの依存度を下げる動きと読める。

向いているのは、対象データがすでにSalesforce側にあり、手順が決まっていて件数の多い業務——一次サポート、見込み客の選別、社内問い合わせなどだ。逆に、データが外部に散らばっていて要件が都度変わる領域では、Data Cloudへの統合コストが先に立つ。まず1つのTopicに絞って本番相当のデータで試すのが、現実的な入り方になる。

Agentforceに関する記事

1 件

ほかの用語