協働ロボット(コボット、cobot)は、安全柵で囲わずに人と同じ作業空間で動かせるように設計された産業用ロボットアームだ。人に接触したときの力や圧力を制限する、あるいは人との距離を監視して減速・停止することで安全性を確保する点が、柵の中で高速に動く従来型の産業用ロボットとの決定的な違いになる。
技術的な土台は安全規格にある。国際規格ISO 10218は協働運転を4つの方式に分けている。安全適合監視停止(人が入ったら止める)、ハンドガイド(人が直接アームを持って動かす)、速度・間隔監視(距離に応じて減速する)、そして出力・力の制限(そもそも痛くない力しか出さない)だ。人体各部位への許容force/pressureを定めたISO/TS 15066がこれを数値で裏打ちしている。日本では2013年の厚生労働省の通達により、規格に適合し安全が確保されていれば、定格出力80Wを超えるロボットでも柵なしで人と協働させられるようになった。これが国内で導入が進んだ制度上の起点である。
エンジニアが実際に触る部分で言うと、可搬重量はおおむね数kgから数十kg、アームの到達範囲は1m前後から2m弱という機種が多い。冒頭で触れたHireboticsのケースでは、アームのリーチが175cmと明示されている。教示はティーチングペンダントでコードを書く方式ではなく、アームを手で動かして位置を覚えさせる、あるいはタブレット上でブロックを並べるノーコード方式が主流だ。用途は工作機械へのワーク着脱(マシンテンディング)、パレタイジング、ネジ締め、外観検査、溶接、塗装といった、人手でやると単調で、かつ専用機を作るには量が足りない工程に当たる。
単体でできることには限界があるため、周辺で能力を足す方向に開発が向かっている。米Hireboticsは2026年のIMTSで、塗装ロボット「Cobot Painter」向けにコンベヤーを止めずに動く部品を塗装できるライン追従機能と、アームの到達範囲を超える大型溶接物に沿ってロボット自体を動かすリニアレールを発表した。いずれもノーコードで扱える。認識側では京セラが3DビジョンとAIを組み合わせたAIビジョンソリューションを展示し、光沢品・極小品・半透明品といった従来は認識が難しかったワークのばら積みピッキングに対応させている。
料金について、確認できた価格情報がないため具体的な金額は書かない。導入を検討する側が押さえるべきなのは、費用がアーム本体だけで決まらないという構造のほうだ。グリッパやハンド、ビジョン、治具、架台、安全柵を外すためのリスクアセスメント、そしてシステムインテグレーション費用が積み上がる。ライン追従やリニアレールのような拡張軸も別費用になる。本体価格の比較で見積もりを作ると、まず外れる。
作っているのは、デンマークのUniversal Robots(米Teradyne傘下)、ファナック(CRXシリーズ)、安川電機、デンソーウェーブ、川崎重工業、スイスのABB、台湾のTechman Robot、韓国のDoosan Robotics、中国のJAKA・AUBO・Elite Robotsなどだ。競争軸は二層に分かれつつある。ひとつはアーム本体の価格競争で、中国勢の参入で単価が下がる方向にある。もうひとつが、塗装・溶接・ピッキングといった用途別のパッケージ、つまりソフトと周辺機器での差別化である。Hireboticsのノーコードなライン追従や京セラのAIビジョンは、後者の層で価値を出す動きと位置づけられる。
最後に誤解しやすい点を一つ。柵がないことは無条件の安全を意味しない。アームが安全でも、掴んでいるワークが刃物や高温物なら危険源はワーク側に移る。リスクアセスメントは必須であり、また出力を抑える設計上どうしても動作が遅いため、サイクルタイムを削り切りたい量産ラインでは従来型の産業用ロボットのほうが適する。
