用語解説 ワットビットれんけい

ワット・ビット連携とは

ワット・ビット連携とは、電力の状況に合わせてAI処理を複数のデータセンターに振り分ける取り組み。現時点では総務省の実証段階にあり、製品としての料金は公表されていない。参加企業、使われている技術、KDDI陣営の類似実証を整理する。

ワット・ビット連携とは、電力(ワット)の状況に合わせて、AIの計算(ビット)を複数のデータセンターに振り分ける取り組みです。1カ所の巨大な施設で計算するのではなく、離れた拠点をネットワークで結び、電力の都合に合わせて処理する場所を変えるのが特徴です。

具体例として、NTTドコモビジネス、中国電力、NTTアノードエナジー、エネコム、北海道総合通信網(HOTnet)の5社が8月に実証を始めました。総務省の実証に採択されたもので、期間は2027年2月までです。三鷹・札幌・広島などの拠点を、IOWN系のネットワーク「APN Plus」で結び、分散したAI処理を試しています。電力会社と通信会社が一緒に参加しているのは、電力と計算を連動させるこの取り組みならではです。

エンジニア向けに「使い方」を説明すると、今は実証の段階です。申し込めばすぐ使えるクラウドサービスやAPIが公開されているという情報は、当サイトでは確認できていません。技術面で押さえておきたいのは次の2点です。1つは、遠く離れたデータセンター同士を低遅延のネットワーク(APN)で結ぶこと。もう1つは、その上でAI処理をどこで実行するかを、電力の状況をもとに決めることです。電力のデータをどう受け取り、処理をどう移すのかといった具体的な仕組みは公表されていないため、ここでは書きません。

料金については、実証中の取り組みなので、利用料金は公表されていません。見積もりや価格表の情報を探しても、今の時点では見つからないはずです。事業会社の企画・DX担当の方は、まず「どんな処理なら遠くの拠点に任せられるか」を確かめる段階だと考えてください。

どんな用途に使えるかは、次に紹介するKDDIらの実証が参考になります。KDDI、モルゲンロット、トークネットの3社は9月、小売店向けロボット(リテールロボット)を使った分散型データセンターの実証を始めました。大阪堺データセンターと多摩ネットワークセンターをAPNで結び、GPU仮想化基盤と組み合わせます。そのうえで、ロボットなど現実世界で動くAI(フィジカルAI)の分散学習と、離れた拠点のGPUを使った遠隔推論ができるかを確かめています。この実証の説明では「ワット・ビット連携」という言葉は使われていません。ただ、APNで離れたデータセンターを結んで計算を分散させるという点で、技術的な土台は共通しています。ロボットのように現場ですぐ反応する必要がある処理を遠くのGPUに任せられるなら、現場に置く機材を減らせる可能性があります。これは当サイトの推測で、実証の結果はまだ出ていません。

投資家の観点で整理すると、誰が作っているかは上の5社です。NTTドコモビジネスとNTTアノードエナジーはNTTグループで、そこに中国電力のほか、エネコム・HOTnetといった地域の通信事業者が加わっています。競合する動きとしては、KDDIら3社の分散型データセンター実証が挙げられます。どちらもAPNでデータセンターを結ぶ点は同じです。違いは重点の置き方で、5社の実証は電力状況に合わせた振り分けを前面に出しています。一方、KDDI陣営はGPU仮想化とロボットAIの遠隔処理を前面に出しています。ただし、両者が同じ市場で直接競うことになるかは、現時点では当サイトの見立てにすぎません。

今後の注目点は、2027年2月までの実証でどんな成果が出るか、そしてそれが商用サービスや料金体系につながるかです。そうした情報が公表されれば、「使い方」と「料金」への答えが具体的になります。

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