用語解説 ワットビットれんけい

ワット・ビット連携とは

電力の余っている場所へAI処理を動かす「ワット・ビット連携」の解説。NTTドコモビジネスら5社が2027年2月までの実証を進める中身、APNを使った分散データセンターの仕組み、料金が未公表な理由、KDDI陣営との違いまで。

ワット・ビット連携とは、電力(ワット)の状況に合わせて、AI処理(ビット)を複数のデータセンターに振り分ける考え方だ。電力に余裕のある地域のデータセンターへ計算そのものを「送る」ことで、送電網の制約とデータセンターの立地制約を同時に緩めようとする取り組みである。

ワット・ビット連携とは何か

従来、データセンターは電力が使える場所に建てるしかなかった。AI向けGPUの消費電力が跳ね上がったことで、この前提が詰まりつつある。ワット・ビット連携はこれを逆転させ、建物ではなく処理のほうを動かす。電力が余る時間帯・地域のデータセンターにAIのジョブを寄せれば、系統増強を待たずに計算能力を確保できる、という発想だ。

名称のとおり、電力事業者と通信事業者が組まないと成立しない点が特徴である。NTTドコモビジネス、中国電力、NTTアノードエナジー、エネコム、北海道総合通信網(HOTnet)の5社が実証に取り組んでいるのは、まさにこの「電力側」と「通信側」の両方を揃えるためだ。

どう使うのか — 実証で動いているもの

5社の実証は、総務省の実証事業に採択されたもので、8月に開始し、期間は2027年2月まで。IOWN系のネットワークである「APN Plus」で三鷹・札幌・広島などの拠点を結び、分散したデータセンター間でAI処理を回す。

ここで鍵になるのが低遅延・広帯域の光ネットワークだ。拠点間を数百km以上またいでも処理を分割できるかどうかが、この構想が成り立つかどうかを決める。KDDI、モルゲンロット、トークネットの3社は9月、大阪堺データセンターと多摩ネットワークセンターをオールフォトニクス・ネットワーク(APN)で結び、GPU仮想化基盤と組み合わせてリテールロボットのフィジカルAIを分散学習・遠隔推論する実証を始めた。GPUの設置場所を最大500km以上離すという検証内容で、「離れたGPUを手元のものとして使えるか」を直接測りにいっている。

エンジニアの視点では、論点はネットワークだけではない。ジョブをどの拠点に置くかを決めるスケジューラが、電力の需給という外部シグナルを入力として持つことになる。学習のように遅延耐性が高いワークロードは動かしやすく、リアルタイム推論は条件が厳しい——その線引きを実データで引くのが、いま進んでいる実証の中身だと理解しておけばよい。

料金はいくらか

現時点で、ワット・ビット連携として提供される商用サービスの料金は公表されていない。上記はいずれも実証段階であり、申し込んで使えるメニューにはなっていない。価格や提供時期を示した情報はないため、ここでは書かない。

事業会社の企画担当が今できるのは、自社のAIワークロードのうち「拠点が離れても困らないもの」を切り分けておくことだ。分散配置の恩恵を受けられる処理を持っていない限り、商用化されても検討の土俵に乗らない。

誰が作っているのか、競合は何か

現状、公になっている取り組みは大きく2つの陣営に分かれる。ひとつはNTTドコモビジネスを中心に電力会社(中国電力)・エネルギー事業者(NTTアノードエナジー)・地域通信事業者(エネコム、HOTnet)を束ねた5社連合で、総務省の実証として電力連携まで含めて扱う。もうひとつはKDDI・モルゲンロット・トークネットの3社で、こちらはGPU仮想化と遠隔利用の技術検証に寄っている。

注意点として、KDDI側の実証は「分散型データセンター」の実証であり、ワット・ビット連携という呼称で発表されたものではない。ただし、APNで拠点を結んでGPUを分散させるという構成は重なっており、同じ方向を別の座組みが試している段階と見るのが妥当だ(これは筆者の見立てであり、両者の関係について公表された事実ではない)。

共通の土台はNTTのIOWN/APNである。通信インフラの世代交代が、データセンターの置き場所という電力側の問題に効くかどうか。2027年2月までの実証結果が、その最初の答え合わせになる。

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