用語解説 シンスアイディー

SynthIDとは

SynthIDはGoogle DeepMindが開発した技術で、AIが生成した画像・テキスト・音声・動画に目に見えない透かしを入れ、あとから検出します。テキスト版はオープンソースです。仕組み、使い方、料金の考え方、C2PAなどの競合を解説します。

SynthIDは、Google DeepMindが開発した電子透かしの技術です。AIが生成した画像・テキスト・音声・動画に人間には気づけない透かしを入れ、あとから検出します。見た目や文面を損なわずに、Googleの生成AIで作られたコンテンツかどうかを機械的に判定できるようにするのが目的です。

最初の発表は2023年8月で、対象はGoogle CloudのVertex AIで使える画像生成モデルImagenでした。その後、音声生成のLyria、動画生成のVeo、Geminiアプリのテキスト出力にも広がりました。画像では透かしをピクセルそのものに埋め込みます。このためメタデータを消しても透かしは残り、切り抜き・フィルタ・圧縮のようなよくある加工にもある程度耐える設計です。

テキストの仕組みは画像と違います。LLMが次のトークンを選ぶときの確率を秘密の鍵にもとづいてわずかに偏らせ、その偏りを文章に残します。検出するときは同じ鍵を使い、偏りがあるかを数値で判定します。Google自身の説明では、次のような文章だと検出の精度が下がります。短い文章、事実だけを答えていて言い回しの余地が小さい文章、翻訳や大幅な書き換えを経た文章です。

エンジニアが自分で組み込めるのはテキスト版です。SynthID Textは2024年10月にオープンソース化され、Hugging Face Transformersに取り込まれました。生成時にSynthIDTextWatermarkingConfigという設定を渡せば、自分で動かすオープンモデルの出力に透かしを入れられます。検出には鍵と、その鍵に合わせて学習させた検出器が必要です。鍵の管理は利用者の責任になります。画像・音声・動画の透かしはGoogleのサービス側で自動的に入ります。本記事で確認できた範囲では、ほかのモデルに組み込めるライブラリは公開されていません。

検出の窓口もあります。2025年5月のGoogle I/Oでは、アップロードしたファイルにSynthIDの透かしがあるかを調べられるポータル「SynthID Detector」が発表されました。報道関係者などへの先行提供から始まっています。

料金について、SynthID単体の価格表は本記事では確認できていません。テキスト版はオープンソースなので無償で手に入ります。画像や動画の透かしはImagenやVeoなどを使った時点で入るので、実質的にはそのサービスの利用料に含まれます。事業会社での使い道としては、生成AIで作った広告素材に出どころの証拠を残す、出回っている画像がGoogleのAIで作られたものかを確かめる、といった場面が考えられます(ここは推測です)。注意点として、SynthIDで検出できるのは透かしを入れたコンテンツだけで、他社のモデルで作ったものは判定できません。透かしが見つからなくても、人間が作ったという証明にはなりません。

開発元はGoogle(Google DeepMind)です。同じ課題への別のやり方として、業界団体C2PAの「コンテンツクレデンシャル」があります。生成元や編集履歴を暗号署名付きのメタデータとしてファイルに付ける方式で、AdobeやMicrosoftが推進しており、OpenAIも生成画像にC2PAのメタデータを付けています。メタデータは消される可能性がありますが、SynthIDはコンテンツ本体に埋め込む点が違います。そのため両者は競合というより補い合う関係で、GoogleもC2PAに参加しています。コンテンツに埋め込む透かし方式では、Metaも音声向けのAudioSealと動画向けのVideo Sealを公開しています。

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