自動運転レベル4は、あらかじめ定めた限定領域(ODD=運行設計領域)の中でなら、システムが運転操作のすべてと、異常が起きたときの安全確保までを引き受ける自動運転の段階を指す。SAE International の規格 J3016 が定めるレベル0〜5のうち上から2番目で、ODD内であれば運転席に人がいなくてよい——これがレベル3までとの決定的な違いだ。
レベル3との差は「誰が最後の責任を持つか」に尽きる。レベル3はシステムが対応しきれなくなったとき「運転を代わってください」と人に引き継ぎを要求でき、人はそれに応じる義務がある。レベル4にはその引き継ぎ要求がない。センサーが汚れても、想定外の障害物が出ても、システム自身が路肩に寄せて停止するところまで完結させる必要がある。一方、レベル5との差はODDの有無だけで、レベル4は「この地域・この道路・この天候なら」という条件付きであることが前提になる。裏を返せば、ODDの線引きさえ狭くすればレベル4は今日でも成立し、広げるほど難しくなる。
エンジニアの観点では、レベル4で新たに必要になるのは認識精度そのものより冗長性と縮退設計だ。ブレーキ・操舵・電源・測位のそれぞれに二重系を持たせ、片方が落ちても最小リスク状態(安全な停止)へ移行できること。そして車内に人がいない以上、遠隔監視センターと通信断時のふるまいまでを含めて「システム」として設計しなければならない。ODDをどう形式的に定義し、逸脱をどう検知して離脱するかが実装上の中心課題になる。
日本での「使い方」は法制度に紐づく。2023年4月1日施行の改正道路交通法でレベル4が「特定自動運行」として制度化され、事業者は都道府県公安委員会の許可を受けて運行する形になった。許可には運行計画の提出、遠隔または現地に置く特定自動運行主任者の配置、事故時の通報体制などが求められる。国内初の許可は2023年5月の福井県永平寺町で、これは低速の小型車両による限定的な運行だった。つまり日本のレベル4は「誰でも車を買えば使える機能」ではなく、現時点では許可を得た事業者が特定ルートで提供するサービスとして立ち上がっている。
料金については、正直に言えば確かな情報が少ない。車両価格も運賃も公表事例が限られており、東京での商用タクシー計画についても本稿が参照した範囲に運賃の記載はない。推測で数字を置くより、「レベル4は車両を売るビジネスではなく運行サービスとして課金される形が主流になりつつある」という構造だけ押さえておくのが安全だ。導入を検討する事業会社にとって、当面のコスト見積もりは車両単価ではなく、ODD構築・遠隔監視要員・許可取得にかかる運用コストの側にある。
プレイヤーで最も具体的に動いているのが、GO・Waymo・日本交通の3社だ。2026年9月15日、3社は東京都での自動運転タクシー商用化に向けた戦略的パートナーシップに合意したと発表し、2027年内に日本初となるドライバー非乗車のレベル4完全無人走行による商用タクシー運行を目指すとしている。立ち上げはまずWaymoの社員を対象にした実運用から始め、その後に顧客向けサービスへ移行する段取りで、運行台数は段階的に100台規模まで広げる計画だ。米国で無人運行の実績を持つWaymoの技術に、GOの配車アプリ基盤と日本交通の運行ノウハウを組み合わせる構図になっている。
読み解くポイントは「無人かどうか」と「ODDの広さ」の2点だ。ハンドルの前に人が座っている限りそれはレベル4の本番ではなく、逆にODDが一区画しかなければ技術的達成であっても事業にはならない。ニュースを見るときは、無人化の有無と対象エリアの広さ、そして対象が社員か一般顧客かを確認すれば、進捗の実質がかなり正確に測れる。
