TSMC N2は、台湾の半導体受託製造(ファウンドリ)最大手TSMCが提供する「2nm級」のロジック半導体製造プロセスです。ソフトウェアやクラウドサービスではありません。チップを設計する企業がTSMCに製造を任せるときに選ぶ「製造技術の世代名」です。
TSMC N2とは
TSMCのプロセス名は「N+数字」で、N2は3nm級のN3の次の世代です。さらにその次として、1.4nm級のA14が予定されています。「2nm」は回路のどこかの寸法をそのまま表す数字ではありません。微細化の世代を示す呼び名です。
技術面で最も大きな変更は、トランジスタの構造です。TSMCはN2で、従来のFinFETからナノシート型のGAA(Gate-All-Around)に切り替えると公表しています。GAAはゲートでチャネルを四方から囲む構造で、微細化を進めても電流を制御しやすくなります。
使い方:誰がどう利用するのか
エンジニアでも、N2をAPIのように呼び出したり、ツールとして手元に入れたりはできません。利用できるのは、TSMCと製造契約を結んだ半導体設計企業です。その企業が受け取るN2向けの設計キットでチップを設計し、TSMCの工場でウェハーに作り込んでもらいます。
事業会社の企画・DX担当者にとっては、N2は直接買うものではありません。N2で製造されたプロセッサやAIアクセラレータを搭載した製品やクラウドサービスを通じて、間接的に恩恵を受けるものです。自社専用チップを作る場合も、通常は設計会社やデザインサービス企業を介すことになります(一般的な業界の構造からの推測です)。
料金:N2はいくらか
TSMCはN2のウェハー価格を公表していません。ネット上の金額は、すべてアナリストの推定か仮定です。
一例として、アナリストのKurnal Insightsは「N2のウェハー価格を3万ドルと仮定」して試算しました。シリコン1mm²あたりの価値は約0.424ドルです。一方、AI需要で高騰しているDRAMは、1ギガビット1.50ドルを1b世代の密度で換算すると1mm²あたり0.654ドルになります。面積あたりの価値は、最先端ロジックのN2をDRAMが上回るという結果です。ただし、3万ドルはあくまで仮定の数字で、実際の契約価格ではありません。
企画・DX担当者が覚えておきたいのは、ウェハー価格を負担するのはチップメーカーだという点です。最終製品の価格には、設計費や歩留まりなども含めた形で反映されます。
誰が作っていて、競合は何か
N2を開発・製造しているのはTSMCです。最先端ロジックの受託製造で競合するのは、Intel Foundry(旧Intelの製造部門)とSamsungのファウンドリ事業です。
N2と直接比べられるのは、Intelの18Aです。Tom's Hardwareは、18AとN2の実機での最高クロックと、両社が公表している世代ごとの性能向上幅をもとに、両社の次世代の性能を試算しています。
次の世代でも競争は続きます。Intel Foundryを率いるNaga Chandrasekaran氏はKeyBancに対し、1.4nm級の14AはTSMCのA14と性能差が「5%以内」になるとの見通しを示しました。ただ、「5%以内」が上回る意味なのか下回る意味なのかは明言されていません。
投資家の視点では、N2は今のTSMCの技術的な優位を示す世代です。同時に、Intelが追い上げを主張する比較の基準でもあります。

