ソブリンクラウドとは、データの保管場所、システムの運用者、適用される法律の3つを、特定の国や利用者の管理下に置けるように設計したクラウドサービスです。「ソブリン(sovereign)」は「主権」を意味し、外国の法律や外国企業の判断でデータが開示されたり、サービスが止められたりするリスクを抑えることが目的です。
ソブリンクラウドとは:普通のクラウドとの違い
一般的なパブリッククラウドでも、データセンターの所在地(リージョン)は選べます。ただし、データが国内にあっても、事業者の本社がある国の法律が及ぶ場合があります。米国の CLOUD Act は、米国の事業者に対して、国外に保管しているデータの提出を求めることを認めています。
ソブリンクラウドは、データの所在地だけでなく、誰が運用し、誰が暗号鍵を持ち、どの国の法律に従うかまで管理することを重視しています。この「データ主権」「運用主権」が、単に国内リージョンを選ぶこととの違いです。
何に使えるのか・使い方
主な利用者は、行政機関、金融、医療、防衛、重要インフラなど、規制によってデータを外部に出しにくい組織です。
エンジニアから見た使い方は、主に次の2つに分かれます。
1つ目は、国内の事業者が運営するソブリンクラウドを契約して、通常の IaaS と同じように使う形です。例として、ソフトバンクは「Cloud PF Type A」をソブリンクラウドとして提供しており、西日本リージョンでも提供を始めたとクラウド Watch が報じています。国内に複数のリージョンがあれば、国外に出さずに災害対策(DR)の構成を組めます。
2つ目は、ソフトウェアをセルフホステッド型で導入し、自社が管理する環境で動かす形です。IBM は「IBM Bob」のセルフホステッド型を発表し、オンプレミスやソブリンクラウドで運用できるとしています。AI を使いたいがデータを外部の SaaS に送れない、という組織に向けた選択肢です。
料金
ソブリンクラウドに共通の料金体系はなく、事業者やサービスごとに異なります。当サイトで確認できている範囲では、「Cloud PF Type A」と「IBM Bob」セルフホステッド型のどちらも、料金は公表情報から確認できていません。
一般論として、運用者を国内に限定したり、専用の設備を用意したりするぶん、同等のパブリッククラウドより割高になりやすいと考えられます(これは筆者の推測です)。検討する際は、各事業者に見積もりを依頼してください。
誰が作っているのか・競合
提供者は、大きく次の3つに分かれます。
- 国内の通信・IT事業者:ソフトバンク(Cloud PF Type A)など - 米国の大手クラウド:AWS は欧州向けに「AWS European Sovereign Cloud」を、Microsoft は「Microsoft Cloud for Sovereignty」を打ち出しています。Google Cloud はフランスで Thales との合弁会社 S3NS を通じて提供するなど、現地企業と組む形をとっています - ソフトウェアベンダー:IBM のように、自社製品をソブリンクラウドやオンプレミスで動かせるようにして、この需要を取り込む動きがあります
投資の観点では、国内事業者と外資の大手クラウドが「主権をどこまで保証できるか」で競う構図です。AI の業務利用が広がり、学習データや社内データの扱いが問題になるにつれて、IBM のように AI 製品をソブリン環境に対応させる動きが増えるとみられます(推測)。



