Vera Rubin NVL72とは
Vera Rubin NVL72は、NVIDIAが開発したAIデータセンター向けのラック型システムです。Blackwell世代の次にあたり、1ラックにRubin GPUを72基、Arm系のVera CPUを36基載せ、全体を1台の巨大なAI計算機として動かします。
名前は、ダークマターの研究で知られる天文学者ヴェラ・ルービンに由来します。NVIDIAは2025年のGTCで「Vera Rubin」世代を予告しました。2026年1月のCESでは、CPU・GPU・NVLinkスイッチ・ネットワーク関連のチップ群をまとめた「Rubinプラットフォーム」として詳細を公表しています。当初は「NVL144」と呼ばれていましたが、GPUの数え方を変えてNVL72という名前になりました。
何ができるのか(エンジニア向け)
主な用途は、大規模言語モデル(LLM)の学習と推論です。NVIDIAが公表している主な仕様は次のとおりです(いずれもメーカーの発表値です)。
- GPUメモリにHBM4を採用し、1GPUあたり288GB - GPU同士を第6世代のNVLinkで接続し、ラック内の72基を1つのドメインとして扱える - ラック全体の推論性能はNVFP4(4ビット浮動小数点)で約3.6エクサFLOPS - Vera CPUはNVIDIA独自設計のArmコアを88基搭載
NVIDIAは、Blackwell世代に比べて推論のトークン単価を大きく下げられると主張しています。ただし、これは自社条件での比較です。第三者による実測値は、この記事の時点では確認できていません。
使い方
個人や一般企業がこの製品を直接買って机に置く使い方はありません。利用する方法は主に2つです。
1. **クラウドで借りる**:NVIDIAは、大手クラウド事業者やGPU専業のクラウド事業者が提供を予定していると発表しています。実際に使えるリージョンやインスタンス名は、各社の公式発表で確認してください。 2. **ラックごと導入する**:サーバーメーカー経由で調達し、自社のデータセンターに設置します。液冷が前提で電力密度も高いため、受け入れる施設側の設計が欠かせません。たとえば三菱電機の米子会社は、Vera Rubin NVL72に対応する「Chip-to-Grid DSX リファレンスデザイン」を公開しました。800VDC配電や、オンサイト発電と蓄電を組み合わせたマイクログリッド運転を含む、電源と冷却を一体にした設計です。
ソフトウェアはCUDAをはじめとする既存のNVIDIAの開発基盤がそのまま使える、とNVIDIAは説明しています。
料金
**NVIDIAは、Vera Rubin NVL72の公式な販売価格を公表していません。** 報道や推計による金額は出回っていますが、確認できる一次情報がないため、この記事では金額を載せません。
事業会社が検討する場合、現実的な入り口はクラウドの時間課金です。料金は提供事業者ごとに異なるので、各社の価格ページや営業窓口で確認してください。自社で導入する場合は、本体の費用に加えて、液冷設備や受電容量の増強といった施設側の投資も必要になります。
誰が作っていて、競合は何か(投資家向け)
開発元はNVIDIAで、GPU・CPU・スイッチ・NIC・DPUといった主要チップを自社で揃えています。サーバーの組み立てや、電源・冷却まわりの周辺機器は、パートナー企業が担当します。
競合は大きく2つに分かれます。1つはAMDのInstinctシリーズを使ったラック型システムです。もう1つは、クラウド大手が自社開発しているAIチップで、GoogleのTPU、AWSのTrainium、MicrosoftのMaiaなどがあります。
需要の面では、AI企業による計算資源の確保が続いています。たとえば、英国のGPUクラウド事業者NscaleがIPOの書類で開示したAnthropicとのGPU契約は、4件で総額約446億ドルにのぼります。一方で、その設備に必要な資金はまだ確約されていないとも開示されました。契約は積み上がっていても、設備の資金調達と電力確保が実際の供給ペースを決める、というのがこの世代を見るうえでのポイントです(これは筆者の見立てです)。

