用語解説 うえはー

ウエハーとは

ウエハーは半導体チップを作り込む円盤状の基板。1枚から何個取れるかが原価を決める。サイズと材料、ファウンドリへの発注単位、MPWでの試作、価格が非公開である理由、そして誰が作っているのかまでをまとめた。

ウエハーとは

ウエハー(wafer)は、半導体チップを作り込むための円盤状の薄い基板です。シリコンの単結晶インゴットを薄く輪切りにして鏡面研磨したもので、この1枚の上に数百〜数千個のチップをまとめて形成し、最後に切り分けて個々のチップにします。

直径で呼び分けられ、先端ロジックやメモリの量産は300mm(12インチ)が中心です。パワー半導体やアナログ、MEMSなどの成熟プロセスでは200mm(8インチ)以下も現役で、SiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)といったシリコン以外の材料のウエハーもあります。語源はお菓子のウエハースと同じで、「薄い板」の意味です。

何ができるのか

ウエハー単位でまとめて作ることが、半導体のコスト構造そのものを決めています。露光・成膜・エッチングといった工程は1枚のウエハーに対して一括で行われるため、1枚から取れる良品チップ数——つまりダイサイズと歩留まり——が原価をほぼ支配します。チップを小さくするのも、大きな直径のウエハーに移行するのも、狙いは同じ「1枚あたりの取れ高」です。

エンジニアから見ると、ウエハーは設計の制約条件そのものです。ダイサイズの上限、レチクル(露光1ショット)の範囲、ウエハー外周の使えない領域、テスト後の良品選別(ビニング)まで、すべてこの円盤の物理に紐づいています。

使い方 — 発注はウエハー単位

ウエハーを買って自分で加工するのは、工場を持つ企業だけです。ファブレス企業や事業会社の開発部門は、TSMCなどのファウンドリに製造を委託し、「ウエハー何枚分」という単位で発注します。チップ何個ではなく、枚数が取引の単位になります。

試作や少量なら、1枚のウエハーを複数の設計で分け合うMPW(マルチプロジェクトウエハー、シャトルとも呼ばれます)を使うのが一般的です。専有のウエハーを丸ごと押さえるのは、量産に移る段階からになります。

料金はいくらか

価格は2層に分かれます。素材としての未加工ウエハーの価格と、ファウンドリに加工まで委託したときのウエハー単価です。後者は顧客ごとの個別契約で、公開されていません(推測値がメディアに出回ることはありますが、各社の公式な数字ではありません)。微細なプロセスノードほど1枚あたりが高くなる、という方向性だけが確かです。

いま実務で効いているのは単価よりも枠の確保です。NVIDIAのジェンスン・フアンCEOは8月26日の決算説明会で、需要に応える上で最も深刻な制約を問われ「サプライチェーン全体」と答えました。同社は次期に70%の増収を見込んでおり、アナリスト予想の44%を大きく上回ります。

誰が作っているのか

未加工のシリコンウエハーは、信越化学工業、SUMCO、台湾のGlobalWafers、独Siltronicといった少数の専業メーカーが供給しています。その上にチップを作り込むのがTSMC、Samsung、Intelなどのファウンドリ/IDMです。投資家が「ウエハーの競合」と言うとき、この2層のどちらを指しているかで話がまったく変わります。

制約は装置と工場だけではありません。McKinseyとSEMI Foundationは、米国の半導体業界で2030年までに最大15万7000人分のポストが埋まらない可能性があると試算しています。米国の工学系卒業生のうち半導体業界に進むのは3%にとどまり、半導体企業の73%がエンジニア職の採用に苦労しているとされます。ウエハーを流す能力は、結局それを動かす人の数に上限を持ちます。

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