High-NA EUVは、半導体ウエハーに回路パターンを焼き付ける「EUV(極端紫外線)露光」の次世代版です。光を集めるレンズ系の性能を示す開口数(NA)を、従来のEUVの0.33から0.55に上げることで、より細かい回路を1回の露光で描けるようにした技術です。
High-NA EUVとは
光の波長は従来のEUVと同じ13.5nmです。変わったのは光学系で、開口数を上げたことで解像できる線幅が細くなりました。従来のEUVで同じ細さを出すには、1つの層を複数回に分けて露光する「マルチパターニング」が必要でした。High-NA EUVでは1回の露光で済むため、工程数を減らし、位置ずれによる不良を抑えられます。
一方で制約もあります。縦と横で縮小率が異なる「アナモルフィック」と呼ばれる光学系を採用したため、1回に露光できる面積は従来の約半分です。大きなチップを作るには、2回の露光をつなぎ合わせる設計が必要になります。
使い方:誰がどう使うのか
High-NA EUVは、半導体メーカーが工場に据え付けて使う製造装置です。ソフトウェアやクラウドのように、一般の企業やエンジニアが直接契約して使えるものではありません。
エンジニアが関わるのは、主に最先端プロセスの設計ルールを通じてです。露光面積が半分になる制約は、チップのレイアウトやマスクの設計に影響します。事業会社がこの技術の恩恵を受けるのは、High-NA EUVで作られたプロセッサやメモリを購入する段階です。
当サイトの記事で確認できる導入計画は次の2件です。
- Intel:High-NA EUV露光装置を2028年に大量生産へ使う方針を確認した(記事URLから読み取れる情報。導入台数は報じられていない) - Micron:DRAMとNANDのロードマップで、High-NA EUVの導入を示した(Tom's Hardwareの報道)
ロジック半導体だけでなく、AI需要で重要性が増しているメモリでも導入が検討されている点が特徴です。
料金:装置はいくらか
ASMLは装置の定価を公表していません。報道では1台あたり3億ユーロ台とする数字が多く出ていますが、これは公式価格ではなく報道ベースの数字です。従来のEUV装置よりさらに高額で、装置自体も大型のため、工場の建屋側でも対応が必要になります。
利用者にとっての「料金」は、装置価格そのものではなく、最終的なチップの価格に上乗せされる形で表れます。マルチパターニングが減ることで工程コストが下がる面と、装置の償却費が上がる面の両方があり、総合的に安くなるかどうかはメーカーや製品によって変わります。これは推測を含む一般的な見方で、確定した試算は公表されていません。
誰が作っていて、競合は何か
High-NA EUV露光装置を製造しているのは、オランダのASMLだけです。初期機のEXE:5000と、量産向けのEXE:5200があります。EUV露光装置そのものもASMLの独占で、ニコンやキヤノンはEUV装置を製品化していません。
直接の競合製品はありませんが、別の方式で微細化を目指す動きはあります。キヤノンのナノインプリント露光は、光ではなく型を押し当てて回路を転写する方式です。もう1つの選択肢は、従来のEUVでのマルチパターニングを続けることで、High-NA EUVの導入時期は各社がコストと歩留まりを比べて判断しています。
投資家の視点では、装置の供給元が1社しかないため、ASMLの受注状況と、Intel・Micronなど導入を表明した企業の量産開始時期が注目点になります。

