ウェットラボとは、試薬や細胞、生体試料などを実際に手に取って実験を行う研究施設のことです。コンピュータ上の計算やシミュレーションで研究を進める「ドライラボ」と対になる言葉で、主に生物学や化学の分野で使われます。
この語がIT系のニュースで目立つようになったのは、AI企業が自社のAIモデルと実際の実験を結びつける場としてウェットラボに取り組み始めたためです。本記事では、用語の意味とAI分野での動きを整理します。
ウェットラボとは:ドライラボとの違い
「ウェット」は、液体の試薬や培養液、生きた細胞を扱うことを指します。ピペットで試料を分け、培養し、測定するといった物理的な作業を行う場所がウェットラボです。一方のドライラボは、データ解析やシミュレーションなど計算機の上で完結する研究を指します。
AIの文脈で重要なのは、ドライラボで出た予測や仮説は、ウェットラボで実際に試すまで正しいかどうか確定しないという点です。AIがどれだけもっともらしい仮説を出しても、生物学では実験結果がなければ検証になりません。
AI×ウェットラボで何ができるのか
当サイトが報じた範囲では、次の2社の動きが確認できています。
Google Researchは、AIエージェントを生物学の現実に結びつけ、自律的に実験を行うウェットラボを実現するための構成要素に関する記事を公開しました。AIが仮説を立てるだけでなく、実際の実験結果に基づいて判断する仕組みを目指すものとみられます(推測)。当サイトで確認できたのは見出しのみで、具体的な手法や成果は分かっていません。
Anthropicは、サンフランシスコのベイエリアに、AIモデルを使って実地の実験を行うウェットラボを持っていることをTechCrunchに認めました。同社のライフサイエンス部門の責任者は「生物学の最終的な検証は実際の実験だ」と説明しています。主な対象は創薬ではなく基礎生物学だとしています。
使い方:AIはウェットラボをどう使うのか
AI企業の取り組みに共通するのは、AIが仮説を出し、ウェットラボで実験し、その結果をもとにAIが次の判断をするという流れです。計算だけで閉じていたAIの研究を、現実の実験データで確かめる構造にする点がポイントです。
エンジニアや事業会社が「使う」という観点では注意が必要です。両社のウェットラボが外部の企業や研究者に開放されているか、APIなどの形で利用できるかは、当サイトでは確認できていません。現時点では、各社が自社の研究のために運営している施設と理解するのが妥当です。
料金:いくらかかるのか
ウェットラボは製品名ではなく施設の種類を指す一般名詞なので、決まった料金はありません。GoogleとAnthropicのAI向けウェットラボについても、利用料金や外部提供の有無は当サイトでは確認できていません。
なお、Anthropicは同じ週に、ライフサイエンス向けに強力なモデルへのアクセスを審査する検証プログラムを始めています。これはモデルへのアクセスに関する制度であり、ウェットラボの利用サービスかどうかは報じられていません。
誰が作っているのか・競合は
当サイトで確認できているAI分野のプレイヤーは、Google(Google Research)とAnthropicの2社です。Googleは「自律型」の構成要素という研究の段階、Anthropicは実際に施設を運営し基礎生物学を対象にしているという段階で、公開されている情報の粒度が異なります。
投資家の視点では、言語モデルの性能競争とは別に、「実験で検証できる環境を持っているか」がAI企業の差になる可能性があります(推測)。ただし、両社とも成果の規模や事業化の計画は公表されておらず、比較できる材料はまだ限られています。

