成熟プロセスとは、最先端の微細化競争から外れ、長年の量産で歩留まりと品質が安定した世代の半導体製造プロセスのことです。業界で統一された定義はありませんが、28nm前後かそれより古い世代を指すことが多く、「レガシープロセス」とも呼ばれます。
成熟プロセスとは何か
「成熟」は性能が低いという意味ではありません。製造装置の償却が進み、不良の原因も洗い出されているため、安く安定して作れる世代だという意味です。最先端の世代はトランジスタを細かくして性能と電力効率を上げますが、すべてのチップが細かい加工を必要とするわけではありません。高い電圧を扱う、アナログ信号を処理する、長い期間同じ部品を供給する、といった条件では、成熟プロセスの方が向いている場合があります。
何に使えるのか(用途)
マイコン、電源IC、アナログIC、センサー、ディスプレイドライバ、通信用のRF部品などが主な用途です。中でも車載と産業機器では、10年単位の長期供給と高い信頼性が求められるため、成熟プロセスが中心になります。事業会社の企画・DX担当にとっては、自社製品に載っている半導体の多くがこの領域に入ることを知っておくと、調達リスクを評価しやすくなります。2021年前後の半導体不足で自動車の生産が止まったのも、主に成熟プロセスの部品が足りなくなったためです。
使い方:エンジニアから見た選び方
チップの設計者が成熟プロセスを「使う」とは、ファウンドリー(製造受託会社)のプロセスを選び、そのファウンドリーが提供する設計キット(PDK)を使って設計することを指します。利点は3つあります。社外から購入できる回路部品(IP)がそろっていること、先端の世代よりマスク費用が安いこと、設計ツールや検証の手順が確立していることです。同じ世代の中にも、高耐圧、不揮発メモリ混載、RF向けといった派生プロセスがあり、どの派生を選ぶかが実際の設計判断の中心になります。
料金はいくらか
成熟プロセスは製品ではないため、定価はありません。ウエハー1枚あたりの単価やマスク費用は、ファウンドリーと顧客の個別契約で決まり、公開されていません。当サイトでも具体的な金額は確認できていません。一般には先端の世代より安くなりますが、需要が供給を上回った時期にはファウンドリーが値上げしたこともあり、価格は需給によって動きます。
誰が作っているのか・競合
主な担い手は、TSMC、UMC、GlobalFoundries(GF)、SMIC、VISといったファウンドリーです。GFは2018年に7nmの開発をやめ、成熟プロセスと特殊プロセスに経営資源を集中させています。投資家が注目すべき競争の構図は、中国のファウンドリーが成熟プロセスの生産能力を増やしていることと、各国が自国や同盟国に工場を置こうとしていることです。
最近の動きとして、日本が最大3.3兆円を投じ、GFが運営する半導体工場を米国に2つ建てる計画が報じられました。NXPとVISの合弁会社VSMCは、シンガポールで300mmウエハーの新工場を開所しています。ただし、どちらの報道もこの時点で確認できたのは見出しだけです。製造するプロセスの世代は明らかになっておらず、成熟プロセス向けの工場だとはまだ断定できません。

