量子コンピューターとは、量子力学の性質である「重ね合わせ」と「もつれ」を使って計算するコンピューターです。0か1のどちらかしか取れない従来のビットではなく、0と1を重ね合わせた状態を持てる「量子ビット」で計算するため、特定の種類の問題では従来のコンピューターよりはるかに少ない手順で答えに届く計算方法が理論的に見つかっています。
量子コンピューターとは:何ができて、何ができないか
量子コンピューターは、何でも速く処理できる万能の機械ではありません。理論上、効率よく解けることが分かっているのは一部の問題に限られます。代表例は、素因数分解(ショアのアルゴリズム。現在の公開鍵暗号の安全性に関わる)、分子や材料の性質を調べるシミュレーション、組み合わせ最適化です。表計算やWeb処理のような日常的な処理は、従来のコンピューターのほうが向いています。
今の量子ビットはノイズに弱く、計算の途中で誤りが起こります。誤りを訂正しながら大規模な計算をする技術はまだ研究段階で、業務の本番で従来の計算機を明確に上回る場面は限られる、というのが当サイトの見方です。
作り方にも複数の方式があります。超伝導回路、イオントラップ、光、中性原子、半導体やダイヤモンド中のスピンなどがあり、どの方式が主流になるかはまだ決まっていません。
使い方:エンジニアはクラウドから触れる
実機を自社で持つ必要はありません。IBM Quantum、Amazon Braket、Azure Quantumといったクラウドサービスを使えば、ネット経由で量子コンピューターやシミュレーターに計算を投げられます。
開発の流れは、PythonのSDK(IBMのQiskit、GoogleのCirqなど)で量子回路を書き、まずシミュレーターで動作を確かめてから実機で実行する、というのが基本です。現在の機械で試しやすいのは、量子計算と従来の計算を組み合わせる手法(VQE、QAOAなど)です。
料金:何に使えて、いくらかかるか
クラウドの量子コンピューターは、多くが従量課金です。たとえばAmazon Braketは、計算1回(タスク)ごとの料金と、測定の繰り返し回数(ショット)に応じた料金を組み合わせています。サービスによっては無料枠があります。単価はサービスや機種によって違い、改定もあるため、具体的な金額は各社の公式の料金ページで確認してください。
事業会社で検討されている用途は、新素材や薬の候補探し、金融のポートフォリオ最適化、物流の配送計画などです。いきなり実機を使うより、シミュレーターでの検証や、量子の考え方を従来の計算機で再現する「量子インスパイアード」技術(富士通のデジタルアニーラなど)から始めるほうが、費用を見積もりやすくなります。
誰が作っているか:主な開発企業と競合
超伝導方式ではIBMとGoogle、イオントラップ方式ではIonQとQuantinuumが代表的です。最適化に特化した「量子アニーリング」ではD-Waveが知られています。
国内では富士通が超伝導方式を開発してきました。日経クロステックによると、ダイヤモンドのスピンを使う別方式の試作機も公開しています。ただし、量子ビットの数や性能、実用化の時期は報道の見出しからは分かりません。また、EE Times Japanによると、富士通は米国に量子技術の研究拠点を設け、現地の国立研究所や大学と組みます。所在地や連携先などの詳細はまだ公表されていません。
投資の観点では、方式間の競争に決着がついていないため、1社や1方式に絞らず、複数の方式に取り組む企業の動きを見ておくのが妥当だと当サイトは考えます(推測を含みます)。

