磁気テープとは、細長いプラスチックのフィルムに磁性体を塗り、そこへ磁気でデータを書き込む記録媒体です。いまは主に企業やデータセンターが、ふだんは読まないが消せない大量のデータを長く保存したり、バックアップを取ったりするために使っています。
磁気テープとは:HDD・SSDとの違い
HDDやSSDは、読みたい場所にすぐアクセスできます。磁気テープは、巻かれたテープを順に送りながら読み書きします(シーケンシャルアクセス)。目的のデータにたどり着くまで時間がかかるため、毎日開く業務ファイルの置き場には向きません。
その代わり、カートリッジをドライブから抜けば、電源にもネットワークにもつながない状態で保管できます。この「オフラインで置いておける」点が、磁気テープならではの強みです。
磁気テープの使い方:何に使えるのか
エンジニアから見た基本の使い方は、テープをドライブに入れ、バックアップソフトやアーカイブソフトから書き込むことです。ドライブには、1台で使うものと、カートリッジを自動で入れ替えるライブラリ装置があります。アプリから直接読み書きするより、バックアップの処理を定期的に回して使うのが一般的です。
事業会社での主な用途は2つあります。
1つめは、量が多いのにめったに読まないデータの保管です。法令や社内規程で長く残す記録、監視カメラの映像、研究や観測のデータなどが当てはまります。
2つめはランサムウェア対策です。ネットワークから切り離したテープは、オンラインの攻撃で暗号化されたり消されたりしにくいため、最後に頼れる復旧手段になります。CNET Japanの報道によると、富士フイルムもランサムウェアへの耐性が注目されていると説明しています。
最近は、AIの学習データや生成データの保存先としても需要が伸びています。
磁気テープの料金:何にお金がかかるか
この記事では具体的な価格を載せません。製品・容量・買い方によって大きく変わり、当サイトで確かめた数字がないためです。
費用は次の3つに分けて考えると見積もりやすくなります。
- メディア(カートリッジ) - ドライブやライブラリ装置 - 運用(保管場所、媒体の管理、定期的に読めるかの確認)
テープが低コストとされるのは、装置を一度そろえれば、容量が足りなくなるたびにカートリッジを足すだけで済み、保管中はほとんど電力を使わないからです。逆に、データ量が少ないうちは装置の初期費用の負担が重くなります。HDDやクラウドの長期保存向けストレージと比べるときは、保存する量・年数・取り出す頻度の前提をそろえてください。
誰が作っているのか:富士フイルムの増産
作り手側では、富士フイルムがデータ保存用の磁気テープの製造能力を5倍にすると発表しました(GIGAZINEなどが報道)。投資額はCNET Japanが100億円、Tom's Hardwareが6300万ドルと伝えています。Tom's Hardwareによると、テープ分野への投資としてはこの20年で最大で、対象は100TBの磁気ストレージテープです。
背景には、AI向けのデータ保存需要の伸びがあります。ただし、増産がいつ終わるのか、どこで作るのか、どのテープ規格が対象なのかは、これまでの報道からは分かっていません。
投資家の視点では、競合はほかのテープメーカーにとどまらず、HDDやクラウドの長期保存サービスを含む「データの長期保存先」全体と見るのが妥当です(これは当サイトの見立てです)。


