デジタルツインとは、工場や機械などの現実の対象をコンピューター上に再現し、その仮想空間で検証や試行を行う技術です。実物を止めたり壊したりせずに、「こう動かしたらどうなるか」を先に確かめられます。
デジタルツインとは何か
名前のとおり、現実の対象の「双子」を仮想空間に作る考え方です。見た目だけを再現した3Dモデルとの違いは、検証に使う点にあります。形に加えて、機械の動きや配置といった条件も再現することで、仮想空間での試行結果を現場の判断に生かせます。
何ができるのか
代表的な用途は、導入前の検証です。スペースデータは、撮影から6時間で工場のデジタルツインを作り、その中でロボットや積み込み・運搬用の機械を試せる技術を開発したと発表しました。実際の工場に機械を持ち込む前に、仮想の工場で試すという使い方です。
もう一つの用途は、AIの安全確保です。ファナックは、CNC(コンピューター数値制御)を軸に、安全なフィジカルAIの実現に取り組んでいるとMONOistが報じました。見出しによれば、デジタルツインと人による承認を組み合わせて事故を防ぐ仕組みです。AIの判断をいきなり実機に流さない構成と考えられますが、これは見出しからの推測で、具体的な機能は確認できていません。
使い方
製品ごとに手順は異なりますが、一般的には次の順に進みます。
1. 対象と目的を決める(例: 新しいロボットを置けるかを確かめる) 2. 現場の撮影やデータ収集で、仮想空間に対象を再現する 3. 仮想空間の中で、機械や手順を試す 4. 結果をもとに、現場で実施するかを人が判断する
エンジニアがまず確認すべきなのは、再現の精度が目的に足りるかどうかです。配置の確認と、機械の細かな動作の検証とでは、必要な精度が変わります。
料金
今回確認できた情報の中に、デジタルツインの公開価格はありません。スペースデータの技術も、公表内容で確認できたのは撮影から6時間という所要時間で、費用は不明です。
ここからは筆者の見方ですが、費用は対象の広さ、求める精度、現場データとの連携の有無、作成後の更新頻度で変わると考えられます。企画・DX担当者が見積もりを取る際は、初回の作成費に加えて、現場が変わったときの更新費を確認しておくと比較しやすくなります。
誰が作っているのか、競合は
今回の材料からは、取り組みの層が異なる3社が見えてきます。ファナックはCNCを軸に工作機械の制御に近い領域、NVIDIAは3D・シミュレーション基盤のOmniverse、スペースデータは工場のデジタルツインを短時間で作る技術です。NVIDIAは公式ブログの連載「Into the Omniverse」で、AIエージェントを使ってアイデアをシミュレーションにする方法を取り上げました。ただし材料は見出しのみで、具体的なツールや事例は確認できていません。
3社が直接競合しているかどうかは、今回の情報からは判断できません。投資の観点で見るなら、制御、基盤、作成ツールのどの層で事業を組み立てている企業かを分けて見るのが、一つの整理の仕方です。


