半導体IPとは、チップの中にある特定の機能ブロックを、他社が再利用できる設計データとして提供するものです。CPUコアやメモリとの接続回路、USBやPCI Expressなどの通信回路が代表例です。チップを開発する会社は、すべての回路を自社で設計する代わりに半導体IPを買って組み合わせます。そうすることで、開発の期間と手間を減らします。
半導体IPとは:何ができるのか
1つのチップ(SoC)には多くの機能ブロックが載っています。そのうち自社の差別化につながらない部分を外部のIPで済ませ、設計の手間を独自の回路に集中させる、というのが基本的な使い方です。
半導体IPは、渡される形によって大きく2種類に分かれます。
- ソフトIP … 回路をハードウェア記述言語(RTL)で書いたもの。製造プロセスを選ばずに使える一方、配置や配線は使う側が行う - ハードIP … 特定の製造プロセス向けにレイアウトまで仕上げたもの。性能を出しやすい反面、決まった工場・プロセスでしか使えない
通信規格に沿ったインターフェースIPは、規格どおりに動くかの検証まで済ませたものを買える点に価値があります。自社で一から作ると、この検証に大きな手間がかかります。
使い方:導入の流れ
エンジニアから見た一般的な流れは次のとおりです。
1. 必要な機能・規格・製造プロセスを決め、対応するIPを選ぶ 2. IPベンダーとライセンス契約を結ぶ 3. 設計データ、検証環境、ドキュメントを受け取る 4. EDA(半導体設計ツール)で自社の回路と組み合わせ、チップ全体で検証する
ハードIPは製造プロセスに縛られるため、どの工場で作るかを先に決めておかないとIPを選べません。
料金:いくらかかるのか
料金は契約ごとの個別交渉で決まり、価格表は一般に公開されていません。そのため、この記事では具体的な金額は書きません。よく使われる仕組みは、契約時に払うライセンス料と、出荷したチップの数に応じて払うロイヤルティの組み合わせです。
規模の目安になる例として、SynopsysがAmazonと10億ドル規模の複数年IP契約を結んだという報道があります。Amazonのカスタムチップ開発向けの契約ですが、当サイトが確認できたのは見出しの情報だけです。対象になるIPの種類や契約期間、どのチップに使うのかは分かっていません。
誰が作っているのか:主なプレイヤーと競合
主な提供元は次のとおりです。
- EDAとIPの両方を扱う企業 … Synopsys、Cadence - CPUなどプロセッサIPの専業 … Arm
CPUの分野では、オープンな命令セットであるRISC-Vが、Armのライセンスに頼らない選択肢として競合の軸になっています。
買い手としては、自社でAIチップを作るクラウド事業者の存在が大きくなっています。前述のAmazonの契約もその流れの中にあります。ここからは推測ですが、EDAとIPを両方持つ企業は、設計ツールとIPをまとめて提供できる点で、こうした大口の顧客と長期契約を結びやすい立場にあると考えられます。

