FD-SOI(Fully Depleted Silicon-On-Insulator、完全空乏型SOI)は、半導体の製造方式のひとつです。薄い絶縁膜(埋め込み酸化膜、BOX)の上にごく薄いシリコン層を載せたウエハーを使い、その上に平面型(プレーナ型)のトランジスタを作ります。
FD-SOIとは:何が普通の半導体と違うのか
一般的なトランジスタは、シリコンの塊(バルク基板)の表面に作ります。FD-SOIでは、トランジスタの下に絶縁膜が入っているため、電流が基板側へ漏れにくくなります。チャネルになるシリコン層がとても薄いので、ゲートをオフにしたときにチャネル全体から電荷がなくなります(これを「完全空乏」と呼びます)。その結果、リーク電流が小さく、低い電圧でも安定して動きます。
FD-SOIに固有の大きな特徴は「バックバイアス(ボディバイアス)」です。絶縁膜の下の基板に電圧をかけると、トランジスタのしきい値電圧をチップの完成後でも変えられます。処理が重いときは速度を上げ、待機中はリークを抑えるといった切り替えが、回路を作り直さずにできます。
使い方:どんな用途に向いているか
エンジニアがFD-SOIを使う場合は、ファウンドリ(受託製造会社)のFD-SOIプロセスを選んでチップを設計します。ソフトウェアのように直接「使う」ものではなく、チップ設計の段階で選ぶ製造ノードです。
向いている用途は、消費電力を抑えたい分野と、アナログ・高周波回路を同じチップに載せたい分野です。具体的には、電池で動くIoT機器、車載レーダーなどのRF・ミリ波回路、エッジAI向けのマイコンなどです。
新しい用途として量子コンピュータがあります。仏Quoblyは9月16日(フランス時間)、STMicroelectronicsの商用300mm製造施設でFD-SOI CMOSプロセスを使って作ったシリコンチップ1枚の上で、量子ビットの読み出し、1量子ビットゲート、2量子ビットゲートという3つの基本動作を実証したと発表しました。既存の量産ラインを使うことで、再現性と拡張性を確保する狙いです。
誰が作っているのか:メーカーと競合
主な製造会社は、GlobalFoundries(22FDXなど)、STMicroelectronics、Samsungです。基板となるSOIウエハーは仏Soitecが主要な供給元です。
GlobalFoundriesは、7nm級の新ノード「FDX Fusion」を発表しました(Tom's Hardwareが報道)。トランジスタ密度は現行の22FDXの2倍になります。同社はFinFETの開発をやめてから7年後にこの発表をしており、先端ノードではFD-SOIに注力する方針がはっきりしています。
競合する技術は、TSMCやIntelなどが先端品で使っているFinFETやGAA(ゲート・オール・アラウンド)です。純粋な演算性能や集積度ではFinFET・GAAが有利です。FD-SOIは、低消費電力、RF性能、製造工程のシンプルさで差別化しています。以上が当サイトとしての整理です。
料金:いくらかかるのか
FD-SOIには公開された価格表はありません。費用は、ファウンドリとの個別契約で決まるマスク代・ウエハー代・設計ツール代と、チップの量産規模によって大きく変わります。具体的な金額は当サイトでは確認できていないため、ここには書きません。
事業会社の企画担当者が検討する場合は、自社でチップを作るよりも、FD-SOIで作られたマイコンや通信チップを部品として選ぶ形が現実的です。低消費電力や長時間のバッテリー駆動が必要な製品なら、採用部品の製造プロセスがFD-SOIかどうかを確認すると、比較の手がかりになります。

