用語解説 でんしすかし

電子透かしとは

電子透かしとは、画像・音声・動画・文章に人が気づかない識別情報を埋め込み、作成元やAI生成かどうかを後から判定する技術。仕組みを画像と文章に分けて説明し、使い方、料金の考え方、SynthIDなどの提供元とC2PAとの違いも解説する。

電子透かしとは、画像・音声・動画・文章などのデジタルデータに、人が気づかない形で識別用の情報を埋め込む技術です。後から専用の検出器で調べると、「誰が作ったか」「AIが生成したものか」「改ざんされていないか」を確認できます。

電子透かしとは何か

もともとは著作権保護のために使われてきた技術です。画像の画素の値や音声の周波数成分をわずかに変え、見た目や聞こえ方をほとんど変えずに情報を持たせます。ファイルの付帯情報(メタデータ)に書き込む方式とは違い、データ本体に埋め込みます。そのため、メタデータを消しても透かしは残りやすいのが特徴です。

最近は、生成AIの出力に印を付ける用途で使われ始めています。日経クロステックは、Anthropicが自社AIの出力する文章に電子透かしを導入したと報じました。見出しによるとEUの規制に対応したものです。ただし、透かしの方式や対象となる製品は確認できていません。

仕組み:画像と文章で何が違うか

画像や音声では、データの細かな成分に信号を重ねて埋め込みます。透かしには2つの型があり、用途で使い分けます。圧縮・縮小・切り抜きをしても残る「頑健型」と、わずかな加工で壊れて改ざんを知らせる「脆弱型」です。

文章には画素のように手を加えられる余地がありません。そこで代表的なのが、AIが次の単語を選ぶ確率を、秘密の鍵に基づいてわずかに偏らせる方式です。人が読むと普通の文章ですが、鍵を持つ検出器は単語の偏りを統計的に判定できます。一般に、短い文章や、言い換え・翻訳を大きく加えた文章では検出しにくくなります。

使い方

エンジニアが試すなら、Google DeepMindのSynthIDの文章向け実装「SynthID Text」が公開されています。Hugging Faceのライブラリを使い、文章の生成時に透かしを入れてから検出器で判定する、という一連の流れを確認できます。

事業会社での主な用途は3つです。 (1) 自社が配信する画像や動画が無断で転用されていないかを追跡する (2) 自社サービスが生成したAIコンテンツに、規制が求める表示を付ける (3) 受け取ったコンテンツがAI生成かどうかを確認する

ただし(3)は、透かしを入れた事業者の検出手段が使えることが前提です。他社のAIが作ったものまで一律に見分けられるわけではありません。

料金

電子透かしには標準的な価格がありません。この記事を書いた時点で、各社の料金は確認できていません。公開されているライブラリを自社のシステムに組み込む場合、主な負担はライセンス条件の確認と開発・運用のコストです。商用サービスを使う場合は、提供元に見積もりを確認する必要があります。

誰が作っているか・競合

AI生成物向けでは、Google DeepMindがSynthIDを展開しています。生物学の分野に適用を広げるとみられる「SynthID Bio」も発表しましたが、詳細は確認できていません。AnthropicもAIの出力文に導入したと報じられています。画像や商品パッケージ向けの従来型では、米Digimarcが専業の代表例です。

競合する技術には、透かしではなく電子署名付きのメタデータで作成元や編集履歴を示すC2PAがあります。メタデータは削除されやすいという弱点があります。一方の透かしは統計的に判定するため、誤検出の可能性が残ります。そのため、両方を併用する考え方もあります。

電子透かしに関する記事

2 件