量子ビット(キュービット、qubit)とは、量子コンピューターが情報を扱う最小単位です。普通のビットは0か1のどちらかの値しか取れませんが、量子ビットは0と1を重ね合わせた状態を取れます。
量子ビットとは:普通のビットとの違い
量子ビットの状態は「0になる成分」と「1になる成分」の組み合わせで表します。計算の途中は重ね合わせたまま操作し、最後に測定した時点で0か1のどちらかに決まります。測定すると重ね合わせは壊れるため、途中の状態をそのまま読み出すことはできません。
複数の量子ビットの間には「もつれ(エンタングルメント)」という強い相関を作れます。n個の量子ビットは2のn乗通りの状態を重ね合わせて表せます。量子コンピューターの計算能力はここから生まれます。一方で、量子ビットは外からの雑音で状態が崩れやすく(デコヒーレンス)、誤りをどう抑えるかが実用化の最大の課題です。
量子ビットの使い方:エンジニアが扱うもの
エンジニアが扱うのは量子ビットそのものではなく「量子回路」です。量子ビットに「ゲート」と呼ばれる操作(値の反転、重ね合わせの生成、2つの量子ビットのもつれの生成など)を順に並べ、最後に測定します。結果は確率的に出るため、同じ回路を何度も実行して結果の分布を見るのが基本です。
分子や材料のシミュレーション、組合せ最適化などが用途として期待されています。ただし、従来のコンピューターより速く解けるかどうかは課題ごとに確かめる必要があります。量子ビットを使えば何でも速くなる、というわけではありません。
方式の違い:誰が作っていて、競合は何か
量子ビットは、何を物理的な素材にするかで方式が分かれます。当サイトが報じた範囲では、次の動きがあります。
- **超伝導方式**:富士通がこれまで開発してきた方式。極低温で動かす - **ダイヤモンドスピン方式**:富士通が試作機を公開した。量子ビットの数、性能、実用化の時期は、報道の見出しからは分からない - **中性原子型・イオントラップ型**:原子やイオンをレーザーで操作する方式
三菱電機は2026年9月、NEDOの事業で2件のプロジェクトが採択されたと発表しました。中性原子型・イオントラップ型向けには高出力で安定したレーザーシステムを、超伝導型向けには極低温で動く超小型の多連低雑音増幅器モジュールを開発します。どちらも量子ビットを動かすための周辺部品です。三菱電機は、2030年代に見込まれる100万量子ビット級の実現に貢献するとしています。
どの方式が主流になるかは、まだ決まっていません。富士通のように複数の方式を並行して開発する企業もあれば、三菱電機のように方式を問わず使える部品から参入する企業もあります(この整理は編集部の見方です)。
料金:いくらで使えるのか
量子ビットが単体で売られているわけではありません。費用がかかるのは、量子コンピューターの利用や共同研究です。当サイトが確認した情報には具体的な価格が含まれていないため、ここでは金額を示しません。導入を検討する場合は、各社の提供条件を直接確認してください。
企画・DX担当者は、まず自社の課題が最適化やシミュレーションのように量子計算に向いた種類かどうかを見極めましょう。そのうえで、小さな検証から始めるのが現実的です(編集部の見解)。


