量子誤り訂正とは、量子ビットに起きる誤りを検出して直す技術です。情報を複数の物理量子ビットにまたがって冗長に持たせることで、これを実現します。量子コンピュータを、長い計算を最後まで正しく実行できる「誤り耐性量子コンピュータ」にするための中核技術です。製品やサービスの名前ではありません。
量子誤り訂正とは
量子ビットは熱や電磁ノイズで状態が崩れやすく、現在の実機では計算を長く続けるほど誤りがたまります。古典コンピュータなら値をコピーして多数決を取れば済みます。しかし量子状態は複製できない(複製不可能定理)ため、この方法は使えません。
そこで、多数の「物理量子ビット」をまとめて 1 個の「論理量子ビット」として扱います。量子状態そのものは測定せず、誤りがあるかどうかだけを示す情報(シンドローム)を繰り返し測ります。その測定結果から誤りの位置と種類を推定する処理を「デコーダ」と呼びます。デコーダは古典コンピュータ側で、量子ビットの動作に追いつく速さで回す必要があります。代表的な方式は、格子状に並べた量子ビットで誤りを検出する「表面符号」です。
基本的な前提として、物理量子ビットの誤り率がある閾値を下回っていれば、符号を大きくするほど論理量子ビットの誤り率は下がります。
何ができるのか・使い方
量子誤り訂正は、エンジニアが単体の機能として呼び出して使うものではありません。誤り訂正は量子コンピュータのハードウェアと制御系の内側で行われ、利用者が扱うのはその上に作られた論理量子ビットです。
ただし、誤り訂正だけでは汎用的な計算はできません。一部の演算には「魔法状態」と呼ばれる特殊な量子状態が必要で、その品質を高めることが実用化に向けた課題の一つです。GIGAZINE と ITmedia NEWS によると、Google は量子プロセッサ「Willow」上で「魔法状態の培養(magic state cultivation)」を実証し、エラーを約 40 分の 1 に減らしました。何と比べて 40 分の 1 なのかや実験の規模は、報道からは確認できていません。
実機に先立ち、古典スーパーコンピュータ上で動作を検証する取り組みもあります。NVIDIA のニュースルームによると、NVIDIA はドイツのユーリッヒ・スーパーコンピューティング・センターで、誤り耐性量子計算のシミュレーションを記録的な規模で行いました。
料金
量子誤り訂正は技術の名前なので、それ自体に価格はありません。誤り訂正済みの論理量子ビットを提供する商用サービスについても、当サイトでは価格情報を確認できていないため、金額は示しません。
事業会社の企画・DX 担当者が押さえておくべき点は、誤り訂正が実用水準に届くまで、量子コンピュータで解ける業務上の問題は限られるということです。検討の際は、ベンダーが示す論理量子ビットの数と論理誤り率を確認するとよいでしょう(これは当サイトの見解です)。
誰が作っているのか・競合
当サイトの報道で確認できる主なプレイヤーは次の 2 社です。
- Google:自社の量子プロセッサ Willow で、魔法状態の生成を実機で効率化 - NVIDIA:量子ハードウェアではなく、スーパーコンピュータ上で誤り耐性量子計算のシミュレーションを担う
競争の焦点は、(1) 物理量子ビットの誤り率をどこまで下げられるか、(2) 論理量子ビット 1 個に必要な物理量子ビットをどこまで減らせるか、(3) デコーダをどれだけ速く回せるか、の 3 点です。ほかの企業の動向は今回の参考情報に含まれていないため、この記事では扱いません。

