再帰的自己改善(RSI)とは
再帰的自己改善(Recursive Self-Improvement、RSI)とは、AIが自分自身の設計や学習方法を改良し、改良されたAIがさらに次の改良を行う、という循環を指す概念です。人間の研究者が手を入れなくても能力向上が連鎖的に続く状態を想定した言葉で、特定の製品名や技術規格の名前ではありません。
ポイントは「再帰的」という部分です。AIが道具として人間の開発を手伝うだけなら、通常のAI活用にとどまります。RSIでは、改良の担い手そのものがAIになり、その改良結果が次の改良能力を高めます。この循環が速く回るほど、能力の伸びが加速すると考えられています。数学者I・J・グッドが1960年代に論じた「知能爆発」の議論が、この考え方の源流としてよく挙げられます。
何ができるのか・使い方はあるのか
エンジニアが検索で「使い方」を探しても、RSIという名前のライブラリやAPIは見つかりません。RSIは研究テーマであり、実現を目指す性質や能力の名前です。そのため、現時点でインストールして使うものではありません。
研究面では、ユルゲン・シュミットフーバー氏が提案した「ゲーデルマシン」が、自分のプログラムを自分で書き換える自己言及的なシステムの理論モデルとして知られています。実務に近い話としては、AIがAI開発の作業(コードを書く、実験を回す、結果を評価する)をどこまで自律的に担えるかが、RSIに近づいているかを測る論点になります。ただし、具体的な評価基準は企業ごとに異なり、統一された指標はありません。
料金は? 事業での使いどころ
RSIは概念なので料金はありません。「RSI対応」をうたう有料サービスがあれば、何を指してRSIと呼んでいるのかを個別に確認する必要があります。
企画・DX担当者が今すぐRSIを業務に導入する場面は、ほぼありません。ただし、無関係ではありません。RSIが現実になると、AIの性能向上のペースが人間の開発サイクルに縛られなくなります。導入したAIツールの能力が短い期間で大きく変わる可能性を前提に、契約や業務設計を硬直させすぎないことが実務上の備えになります(これは筆者の見立てです)。
誰が取り組んでいるのか(投資家向け)
当サイトで報じた範囲では、次の2社の動きが目立ちます。
**Anthropic**:AIが自らを開発・改良していくRSIの能力に「非常に近いところまで来ている」と警告しました(TechCrunch報道)。どの評価でそう判断したのか、対象モデル、安全対策の内容は、確認できた範囲では明らかになっていません。AI開発大手が自らこの水準に近いと公言したため、規制や安全性の議論に影響する発言といえます。
**Sakana AI**(東京):LSTMの共同開発者として知られるシュミットフーバー氏がチーフ・サイエンティフィック・アドバイザーに就き、RSIを研究する組織「RSI Lab」を指導します。同社は世界モデルを開発し、製造業やロボティクス向けのフィジカルAIを目指しています。
このほかの企業の取り組み状況や、各社の研究の進み具合を比べた公開データは、本記事では確認できていません。「競合」は製品の市場シェアで比べられるものではなく、自己改良をどこまで実証できたかという研究競争として見るのが適切です。
まとめ
RSIは「AIがAIを改良し続ける循環」を指す概念で、使い方や料金がある製品ではありません。Anthropicの警告やSakana AIのRSI Lab設立のように、主要プレイヤーがこの言葉を前面に出し始めています。今後は、各社がどんな評価でRSIへの接近を判断するのか、どんな安全対策を示すのかが注目点です。

