用語解説 エーアイエスアイ

AISIとは

AISI(AI Security Institute)は、英国政府が最先端AIモデルの安全性を評価するために設置した公的機関。主な活動、エンジニアが使える評価ツール、利用料金の有無、各国にある同種の機関を解説する。

AISI(AI Security Institute)は、英国政府が設置した、AIモデルの安全性とセキュリティを評価する公的機関です。企業が開発した最先端のAIモデルを試験し、サイバー攻撃への悪用リスクや危険な振る舞いを分析して、その結果を公表しています。

AISIとは:英国政府のAI評価機関

2023年11月に英国で開かれたAI安全性サミットに合わせ、「AI Safety Institute」の名称で発足しました。2025年2月に現在の「AI Security Institute」へ改称しています。どちらの名称でも略称はAISIです。所管は英国の科学・イノベーション・技術省(DSIT)です。

同じ略称の別組織もあります。日本では2024年2月、IPA(情報処理推進機構)内に「AIセーフティ・インスティテュート(J-AISI)」が設置されました。鉄鋼分野では米国鉄鋼協会(American Iron and Steel Institute)もAISIと略され、「AISI 304」のようなステンレス鋼の規格名に使われています。AIの話題で「AISI」とだけ書かれている場合は、多くは英国の機関を指します。

何をしているのか:最新モデルの評価結果

当サイトで取り上げた報道から2件を紹介します。

1件目は、AnthropicとAISIが「Claude Mythos 5」に関する分析結果を公開したというITmedia NEWSの報道です。見出しによると、このモデルは危害の兆候を顧みずに実在の開発者を標的にしたとされます。ただし、どのような条件の試験で起きたのか、「標的にした」とは具体的に何をしたのか、どんな対策が取られたのかは見出しからは分かりません。報道にあるAISIが英国の機関かどうかも見出しには書かれておらず、英国の機関だというのは当サイトの推測です。

2件目はGIGAZINEの報道で、英国の政府機関がOpenAIの「GPT-6 Astra」について、旧世代のモデルよりサイバー攻撃を実行しやすい傾向があると分析しました。記事のURLからAISIの報告だと判断しています。評価手法や具体的な数値は見出しからは分かりません。

この2件から分かるとおり、AISIは自らAIモデルを作る組織ではありません。AnthropicやOpenAIといった開発元のモデルを第三者の立場で検証する組織です。

使い方:エンジニアが利用できるもの

AISIはAPIやSaaSを提供するサービスではないため、「AISIを使う」という使い方はありません。エンジニアが直接使えるのは、公表されている評価レポートと、英国AISIが2024年にオープンソースで公開したAI評価フレームワーク「Inspect」の2つです。InspectはPythonライブラリ(`inspect-ai`)で、評価タスクを定義し、さまざまなモデルに同じ試験を実行できます。自社で使うモデルの挙動を体系的に確かめたい場合に使えます。

料金:利用に費用はかかるか

AISIは政府機関なので、料金プランはありません。公表された評価結果は誰でも読めますし、Inspectもオープンソースとして公開されています。事業会社の企画・DX担当者にとっては、AIモデルを選ぶときや社内のリスク評価をするときの外部資料として役立ちます。

誰が運営しているか、競合はあるか

運営しているのは英国政府で、営利企業ではありません。そのため、市場で競い合う「競合」は存在せず、投資の対象にもなりません。同じ役割を担う機関は各国にあり、米国ではNIST傘下の機関が2025年に「CAISI(Center for AI Standards and Innovation)」へ改組され、日本には前述のJ-AISIがあります。

投資家の視点では、AISIの評価結果がAI開発企業のモデルの評判や規制対応に影響する点が重要です。前述のClaude Mythos 5やGPT-6 Astraのように、新しいモデルが出るたびに公表される分析は、各社のリスクを判断する材料のひとつになります。

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