AI PCとは、生成AIなどのAI処理をクラウドに送らず、手元のPCの中で実行できるよう設計されたパソコンです。CPUとGPUに加えてAI処理向けのNPUを載せた機種を指すことが多いものの、業界共通の厳密な規格はなく、定義はメーカーごとに異なります。
AI PCとは:普通のPCとの違い
違いの核心は、AIの推論をどこで動かすかです。クラウド型のAIは入力をサーバーへ送って処理します。AI PCは学習済みモデルを端末上で動かすため、オフラインでも使え、データを外部へ送らずに処理できます。
性能を左右するのは処理装置の使い分けです。NPUは少ない電力で推論を続けるのが得意で、会議中の背景ぼかしのように動き続ける処理に向きます。GPUは演算性能が高く、大きなモデルに向きますが、消費電力も大きくなります。
NPUの性能指標にはTOPS(1秒あたりの演算回数)が使われます。代表的な基準は、MicrosoftがCopilot+ PCの要件に定めた40TOPS以上のNPUです。
使い方:何ができるのか
エンジニアなら、OllamaやLM Studio、llama.cppといったツールで公開モデルを手元で動かせます。購入前に見るべきなのはTOPSだけではありません。モデルがメモリに載らなければ実用的な速度は出ないため、メモリ容量(GPUが独立している機種ならVRAM容量)が実質的な上限になります。また、NPUを使えるかはツールごとに異なり、実際にはGPUやCPUで動く場合もあります。
企画・DXの立場では、社外に出しにくい文書の要約や検索、会議の文字起こしが有力な用途です。ただし、手元で動くモデルは端末の性能に制約されます。難しい処理はクラウド、機密性の高い定型処理は手元と使い分けるのが現実的だと筆者は考えます。
料金:いくらかかるのか
AI PCはサービスではなくハードウェアなので、AI PC独自の料金体系はありません。費用の中心はPC本体の購入費です。手元でモデルを動かすだけなら、クラウドAIのような利用量に応じた課金は発生しません。一方、クラウド型のAIサービスを使う場合は、その契約費用が別にかかります。
価格は機種や構成で大きく変わるため、本記事では金額を示しません。導入を検討するなら、全社員分のPC更新費と、クラウドAIの契約費を同じ利用人数で比較するのが確実です。商用利用では、動かすモデルのライセンス確認も必要です。
誰が作っているのか:主要企業と競合
中核となる半導体の主要プレイヤーは、Intel(Core Ultra)、AMD(Ryzen AI)、Qualcomm(Snapdragon X)、NVIDIAです。OSではMicrosoftがCopilot+ PCの要件を定めており、完成品のPCは各メーカーが販売しています。
最近の動きとして、NVIDIAは「RTX Spark」搭載PCが入手可能になったと発表し、「Windows PCにとっての新たな始まり」と表現しました。ただし、当サイトが確認できたのは見出しの範囲で、搭載機のメーカー、価格、性能、対応地域は分かっていません。これがPCの大きな変化の始まりになるのかは、ASCII.jpも疑問形で論じている段階で、結論は出ていません。
投資の観点で注目すべきは、NPUとGPUのどちらが手元のAI処理の主役になるかだと筆者は推測しています。NVIDIAの参入がその競争にどう影響するかは、搭載機の性能と価格が明らかになってから判断する必要があります。

