カスタムAIチップとは、クラウド事業者やIT大手が自社のAI処理に合わせて独自に設計する専用の半導体のことです。NVIDIAなどが外部に売る汎用のGPUとは違い、設計した会社が自社のデータセンターやサービスで使うことを主な目的にしています。
カスタムAIチップとは:汎用GPUとの違い
AIの学習や推論には、現在は汎用のGPUが広く使われています。GPUは多様な計算をこなせる反面、特定の処理だけを見ると、使わない回路や消費電力の無駄を抱えています。
カスタムAIチップは、自社で動かすモデルや処理の種類に合わせて回路を絞り込んだ専用設計のチップです。一般にASIC(特定用途向け集積回路)と呼ばれる種類にあたります。狙いは主に三つあります。処理あたりの電力効率を上げること、外部のGPU調達に頼る度合いを下げること、データセンター全体のコストを自社で管理することです。
一方で、設計には大きな初期投資と時間がかかり、対応するソフトウェアも自前でそろえる必要があります。このため、作れるのは事実上、巨大なAI需要を抱える一部の企業に限られます。
使い方:エンジニアはどう触れるのか
カスタムAIチップは、パーツとして買って自社サーバーに挿すものではないのが普通です。利用者は、チップを開発したクラウド事業者の計算サービスを通じて間接的に使います。
エンジニアにとって大事なのは、GPU向けに書いたコードがそのまま動くとは限らない点です。チップごとに対応するフレームワークやコンパイラが異なるため、採用する前に次の点を確かめる必要があります。
- 使っているモデルとフレームワークに対応しているか - 学習用か、推論用か - 移行の手間に見合うコスト差があるか
料金:いくらかかるのか
チップ単体の販売価格は、基本的に公表されていません。利用者が払うのは、クラウド上の計算資源を使った時間や量に応じた料金です。
事業会社の企画・DX担当がコストを比べるときは、チップ名ではなく「同じ処理をGPUで動かした場合との総額差」で比べるのが現実的です。具体的な単価は事業者ごとに異なり、本記事の材料からは示せません。
誰が作っているのか:開発企業と競合
当サイトで扱った事例では、Microsoftが自社設計のカスタムチップの最新版「Maia 300」を発表しました。性能、製造プロセス、搭載先、提供時期は、確認できた発表の見出しからは分かっていません。
投資家の視点では、カスタムAIチップは汎用GPUの最大手であるNVIDIAと競合する一方、補い合う面もあります。大手IT企業は自社チップを開発しながら、GPUも引き続き調達しているためです。その一例として、MetaはAI投資の拡大に向けて最大950億ドル規模の株式発行を計画しており、NVIDIA、AMD、Broadcomの3社が出資に関心を示していると報じられています。チップメーカーが顧客のAI投資に資金面でも関わろうとしていることが分かります。ただし、発行の形式や各社の出資額はまだ分かっていません。
今後の注目点は、各社の自社チップがどの程度GPUを置き換えるかです。これについて現時点で数値で示せる材料はなく、ここで書けるのは推測にとどまります。

