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アイルランドのメイヌース大、電気を使わないDNA計算機。100ビット演算に成功

アイルランドのメイヌース大学の研究チームが、電気を使わずに複雑な数学演算を行うDNA分子コンピューターを作ったと発表した。「Scaffolded DNA Computer(SDC)」と呼ぶこの系は、DNAオリガミの手法で自己組織化した微細な計算グリッドを構成し、塩基対の結合と解離で情報を処理する。10種類の分子プログラムを実行し、加減乗除と100ビット計算に成功した。物理法則に制約されるため誤り訂正ソフトウェアを必要とせず、消費電力はゼロだという。

アイルランドのメイヌース大学の研究チームが、DNA鎖を使って電気なしで複雑な数学演算を行う分子コンピューターを作った。9月16日付で学術誌に掲載されたもので、研究チームは「この種のものとしては初」とし、最も複雑かつ高速な分子コンピューターの一つだと位置付けている。「Scaffolded DNA Computer(SDC)」と名付けられたこの系は、10種類の分子プログラムを実行し、100ビットの複雑な計算を含む処理に成功した。

作り方はDNAオリガミと呼ばれる手法による。専用ソフトウェアで1本の長いDNA鎖と、数百本の短いカスタム合成「ステープル」鎖を設計し、水と塩を入れた試験管に加える。混合物を加熱してから冷却すると、鎖が自己組織化して高度に整理された微細な計算グリッドを形成する。長い鎖が構造の足場(スキャフォールド)として働く。

動作原理は、従来のシリコンコンピューターとまったく異なる。トランジスタで電圧を1と0に切り替える代わりに、塩基(A、T、C、G)の結合と解離で情報を処理する。プログラムは試験管に入れる前にDNAの配列そのものへ書き込まれており、加熱によって与えられた熱エネルギーが化学反応を始動させ、DNA鎖が組み換わる。分子が最も安定な構造状態へ向かって自然に移行していく過程が、そのままプログラムされたアルゴリズムを解く計算になり、最終的な構造が答えを表す。

検証では10種類の分子プログラムを走らせ、加算、減算、乗算、除算を実行。100ビットの計算も誤りなく処理し、複雑なデータを確実に扱えることを示した。注目すべきは、この系が物理法則に制約されているために誤り訂正ソフトウェアを必要としない点だ。そして計算に電気を一切使わない。反応の駆動源が化学だからである。

研究チームは、長期的なデータ保存、エネルギー効率の高い計算、さらにはいずれ細胞内で動作して疾患検出などに使える分子システムへの道が開けると述べている。電力面の意味は、研究チームの母国であるアイルランドで特に大きい。同国ではデータセンターが国内電力消費の23%を占めるに至っており、計算需要と電力供給の衝突が現実の制約になっているためだ。もっとも、現時点で示されたのは10本のプログラムと100ビット規模であり、汎用計算機の代替になる段階からは遠い。低電力の専用計算や分子スケールでの応用という文脈で読むべき成果だ。

出典 — Tom's Hardware

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